財政政策とシムシティ

シムシティというゲームでは、原則、財政収支は黒字でなくてはならない。赤字になると何もできなくなる。新規の公共事業もできないし、既存の公共サービスも停止なくてはならない。すべては、財政収支を黒字にするためである。

現実の財政においては、財政収支を黒字にすることの意味と赤字にすることとはどのような意味があるであろうか。現在の政府などが収入を得る方法は大きく三つある。一つは租税、二つ目は公債、三つ目は通貨の発行である。しかし、これら三つともに、貨幣や紙幣という形で収められるのが一般的であろう。では、そのような通貨の形で得られる収入が黒字になるとは何を意味するだろうか。政府の財政収支が黒字になると、黒字の分だけ、市中に流通するお金の量は減少するのである。お金の量が減少することは、決済手段が減少するとも言える。ところで、通貨の移動とは逆方向に、商品やサービスなどが移動して行くと考えられる。決済手段が減少すれば当然これらの商品やサービスなどの移動も減少して行くだろう。これは、景気の減速とも考えられる。すなわち、財政収支が黒字になれば、結果として景気の減速を引き起こす可能性がある。景気が過熱気味であれば、インフレを抑制する効果が期待できるがデフレの場合かえって逆効果になるだろう。次に、財政収支が赤字になる場合である。これは、ふた通り考えられる。一つ目は、赤字分を、さらなる増税か公債を発行して市中で吸収して賄う場合は、全体としての通貨の流通量は変化しないが、通貨をあちらからこちらへ移動することになる。場合によっては、例えば、お金のだぶついているところから、お金のないところへ移動させることによって、うまくすれば、経済活動を活発にすることができるかもしれない。あるいは、消費税のように逆効果になる可能性もある。次に二つ目であるが、これは、赤字分を通貨の増発、もしくは、公債の中央銀行に引き受けさせることで賄う方法である。この場合は、全体としての通貨の流通量は増加するから、決済手段の増加を意味し、先に述べた理由により、経済を活性化させるかもしれない。もちろん、そのようなインセンティブがあればの話であるが、インフレの時にこのような手法は、インフレを亢進するので、確かに禁じ手であろう。だが、そうでなければ、逆にデフレであれば良い効果をもたらすとも考えられる。識者とやらの中には、何が何でもダメというのがいるが、そもそもインフレの時の禁じ手がデフレでも禁じ手となるわけではないのだ。

以上、財政収支が黒字になった時と赤字となった時の効果を見てきたが、財政政策という観点から見れば、黒字にするか、赤字にするかで、経済活動を調節できると考えれば、これは、そのための手段とも考えられよう。

しかし、現実の社会においては、そのような考え方はされない。むしろ、黒字は良くて赤字はダメというステレオタイプな見方ばかりが強調される。はっきりいうとシムシティである。地方自治体には通貨の発行権が認められない以上仕方ないかもしれないが、国の場合は違うのである。通貨の発行権を国家が独占している以上必要な時に必要なことをしないのはただの怠慢でしかない。

シムシティでは、シムオリオンという仮想の通貨があるが、この出どころがイマイチはっきりしないのは非常に不満である。もし、シムネイションというゲームを作るのであればこのような通貨の発行権が誰かという観点や、通貨の流通量の与える効果というものをゲームシステムの中に組み込んでいただきたいと切に願っている。また、政府部内の政策調整なんかも取り込んでよりリアルなゲームにしてもらいたいと切に願っている。